「聖地巡礼」という言葉、使っていい場面と、言い換えたほうがいい場面があります。結論を先に言います。相手が作品のファンで、対象がアニメ・ドラマなどの舞台なら、そのまま「聖地巡礼」でまったく問題ありません。一方で、①実在の宗教施設・慰霊施設・被災地を指すとき、②社外向け文書や自治体資料に書くとき、③英語話者に説明するとき——この3場面では別の語に置き換えるべきです。
なぜ場面を選ぶのか。理由は語の出自にあります。「聖地巡礼」はもともと宗教用語で、アニメ文脈への転用は後発です。実際、小学館のデジタル大辞泉は宗教義とアニメ俗用の2語義を載せていますが、精選版 日本国語大辞典は宗教義しか立てていません(いずれもコトバンク収録)。辞書間でも扱いが割れている語なので、読み手によって受け取り方が変わります。
この記事では、語釈と例文の羅列で終わらせません。「その場面でこの語を使って失礼にならないか」に答えるための5分岐チャート、類語6語の使い分け早見表、使う前の7項目チェックリストを用意しました。読み終えれば、相手と媒体に合った一語をその場で選べます。
「聖地巡礼」は宗教語からの転用。ファン同士ならそのままでOK、公的文書・宗教施設・英語話者の3場面だけ言い換える——これが判断の骨格です。
結論:まず「対象・媒体・相手」の3点を確認する
「聖地巡礼」を使う前に確認すべきは、指す対象・書く媒体・読む相手の3点だけです。この3点が「作品の舞台・SNSや会話・ファン」に揃っていれば、そのまま使って問題ありません。
判断の手順は次のとおりです。
- 対象を確認する:指しているのが実在の宗教施設、慰霊施設、被災地なら使わない。「参拝」「訪問」「慰霊」に置き換えます。
- 媒体を確認する:社外向け文書、自治体資料、報告書なら「コンテンツツーリズム」「ロケ地訪問」に置き換えます。
- 相手を確認する:非ファンなら「〇〇のロケ地を見に行く」と平易化。英語話者なら anime pilgrimage (seichi junrei) と併記します。
- 上記いずれにも当たらなければ:「聖地巡礼」のまま使えます。動詞化した「聖地巡礼してきた」も自然です。
なぜ3点確認が必要なのか
語の意味が読み手ごとに違うため、送り手側で先に絞る必要があります。
同じ「聖地巡礼に行ってきました」でも、アニメファンには「作品の舞台を訪ねた」と伝わり、宗教に馴染みのある読み手には「霊場を参拝した」と伝わります。作品名を添えない短文ほど誤読の余地が広がります。
迷ったときの安全策は「作品名を添える」
一語で迷ったら、作品名を前に付けるだけで誤読はほぼ消えます。
「聖地巡礼に行きます」ではなく「『君の名は。』の聖地巡礼に行きます」。この一手間で、宗教巡礼と読まれる可能性がなくなります。フォーマル度が足りない場面ではさらに言い換えが要りますが、日常のやり取りはこれで足ります。
対象・媒体・相手の3点確認。宗教/慰霊/被災地なら回避、公的文書なら言い換え、非ファン・英語話者なら平易化か併記。それ以外はそのままでOK。
「聖地巡礼」とは?意味と2つの語義を辞書で確認

「聖地巡礼」には宗教上の聖地を参拝して回ることと、アニメ・漫画の舞台を訪れることの2つの意味があります。前者が本来の意味、後者は2000年代以降に定着した俗用です。
コトバンク収録の小学館デジタル大辞泉は、①宗教上の聖地・霊場などを参拝して回ること、②俗に、熱心なファンがアニメ・漫画などの舞台となった土地や建物を、聖地と称して訪れること——の2語義を掲載しています。
一方、同じくコトバンク収録の精選版 日本国語大辞典は「聖地、霊場、あるいは本山などを、順次参拝して信仰を深める宗教行事」と定義し、アニメ俗用の語義を立てていません。
辞書間の差が意味すること
辞書によって語義数が違う事実は、そのままフォーマル度の目安になります。
主要国語辞典で語義数が割れている(デジタル大辞泉=2語義/精選版 日本国語大辞典=1語義)ということは、アニメ用法が全読者層に定着したとは言い切れない段階だということです。だからこそ、公的文書や年配層向けの文章では言い換えが安全になります。
観光業界での定義
観光の専門機関は「聖地巡礼」をコンテンツツーリズムの一種として位置づけています。
JTB総合研究所の観光用語集(2024年8月20日更新)によると、「聖地巡礼」は本来、宗教的に重要な意味を持つ場所を訪問することを指し、近年は漫画・アニメ・テレビドラマのロケ地巡りなど縁のある土地を訪れる旅も指す語とされ、フィルムツーリズム/コンテンツツーリズムの一種に分類されています。業界文書では上位概念の「コンテンツツーリズム」が使われる、という事実がここから読み取れます。
流行語としての定着
アニメ用法が世間一般に認知された年は、はっきりしています。
自由国民社の新語・流行語大賞公式サイトによると、2016年の第33回「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン新語・流行語大賞で「聖地巡礼」がトップテンに選出されました(受賞者はディップ株式会社、同年の年間大賞は「神ってる」)。また、三省堂のことばコラム「ニュースを読む 新四字熟語辞典」でも新しい四字熟語の一項目として取り上げられています。
アニメ文脈の聖地巡礼を広めた初期作品としては、2002年1月〜3月に放送された『おねがい☆ティーチャー』(舞台:長野県大町市・木崎湖)がよく挙げられます。2016年の流行語入りまで、定着に十数年かかった計算です。
「聖地巡礼」と「舞台探訪」の違いは?類語6語の使い分け早見表
「聖地巡礼」と「舞台探訪」はほぼ同じ行為を指しますが、使う人の立場が違います。前者は一般ファン・推し活層に広く、後者は考証重視の古参ファンに好まれる語です。
上位記事の多くは「ほぼ同義」で片づけますが、実際にはコミュニティ内で選好が分かれます。「聖地」という宗教由来の比喩を避けたい層が「舞台探訪」を選ぶ、という構図です。相手に合わせて語を選べると、書き手の解像度が伝わります。
類語6語を、対象・立場・フォーマル度・宗教的含意・例文・注意点で整理しました。フォーマル度は ◎(自然)/○(可)/△(避けたい)で示します。
| 項目 | 聖地巡礼 | 舞台探訪 | ロケ地巡り | コンテンツツーリズム | 遠征 | 参拝・巡拝 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ①主な対象 | アニメ・漫画の舞台 | アニメ・漫画の舞台(考証込み) | 実写ドラマ・映画の撮影地 | 作品由来の観光現象全般 | ライブ・イベント会場 | 宗教施設・霊場 |
| ②主に使う人 | 一般ファン・推し活層 | 古参ファン・考証寄り | 一般層・実写ファン | 行政・観光事業者・研究者 | ライブ参加者 | 信者・参拝者 |
| ③フォーマル度 | SNS◎/会話◎/社内資料○/公文書△ | SNS◎/会話○/社内資料○/公文書○ | SNS◎/会話◎/社内資料◎/公文書◎ | SNS△/会話△/社内資料◎/公文書◎ | SNS◎/会話◎/社内資料△/公文書△ | SNS○/会話◎/社内資料◎/公文書◎ |
| ④宗教的含意 | 強い。デジタル大辞泉は俗用も載せるが、精選版 日本国語大辞典は宗教義のみ。辞書間で扱いが割れるため公文書は△ | ほぼ無い(「探訪」は中立語) | 無い | 無い(学術・行政語) | 無い | 本来の宗教語。転用不可 |
| ⑤そのまま使える例文 | 「『らき☆すた』の聖地巡礼で鷲宮に行ってきました」 | 「舞台探訪で背景美術と実景を照合しました」 | 「ドラマのロケ地巡りで尾道を歩きました」 | 「コンテンツツーリズムによる交流人口増を検証する」 | 「名古屋公演の遠征で前泊します」 | 「四国八十八ヶ所を巡拝しています」 |
| ⑥浮く・誤解される場面 | 公的文書、宗教施設を指すとき、非ファンへの説明 | 一般層には通じにくい | アニメ作品には違和感 | ファン同士の会話では硬すぎる | ファン外には意味が伝わらない | アニメの舞台に使うと不謹慎に響く |
「巡礼」だけを単独で使う場合
「巡礼」単体は宗教色がさらに強く出ます。
メッカ巡礼、エルサレム巡礼、サンティアゴ巡礼路のように、単独の「巡礼」は宗教行為を指すのが基本です。アニメ文脈で使うなら「〇〇巡礼」と作品名を冠するか、「聖地巡礼」の形で使うほうが誤解が生じにくくなります。
「参拝」「巡拝」を作品の舞台訪問に使うのは避けてください。逆に「聖地巡礼」を実在の寺社への参拝に使うのも不適切です。この2語は方向を問わず互換できません。
その「聖地巡礼」、使って大丈夫?5分岐チャートで判定
5つの質問に順に答えるだけで、使うべき語と例文が決まります。所要時間は1分未満。上から順に、YESで終端に進み、NOなら次の質問へ移ってください。
判定チャート
``` Q1. 指す対象は、実在の宗教施設・慰霊施設・被災地ですか? ├ YES →【終端A】使用を回避(「参拝」「訪問」「慰霊」へ) └ NO ↓ Q2. 書く媒体は、社外向け文書・自治体資料・報告書ですか? ├ YES →【終端B】「コンテンツツーリズム」「ロケ地訪問」へ └ NO ↓ Q3. 相手は作品のファン/推し活層ですか? ├ NO →【終端C】「〇〇のロケ地を見に行く」と平易化 └ YES ↓ Q4. 相手は英語話者・訪日客ですか? ├ YES →【終端D】anime pilgrimage (seichi junrei) と併記 └ NO →【終端E】そのまま「聖地巡礼」でOK ```
終端A:宗教施設・慰霊施設・被災地は言い換える
実在の信仰対象や慰霊の場に「聖地巡礼」を使うのは避けます。
宗教施設を趣味的な訪問対象として扱う響きが出るためです。慰霊施設や被災地では、遺族や地域住民への配慮を欠く表現になります。
- ❌ NG例文:「広島の平和記念公園に聖地巡礼してきました」
- ⭕️ OK例文:「広島の平和記念公園を訪れ、慰霊碑に手を合わせてきました」
終端B:公的・社外文書は上位概念に置き換える
報告書や自治体資料では「コンテンツツーリズム」が無難です。
根拠はJTB総合研究所の定義(2024年更新)で、同研究所は「聖地巡礼」をコンテンツツーリズムの一種として分類しています。上位概念を使えば、宗教義との衝突を回避しつつ意味も正確に伝わります。
- ⭕️ OK例文:「本事業では、アニメ作品を活用したコンテンツツーリズムによる誘客効果を検証する」
終端C:非ファンには行為で説明する
作品に馴染みのない相手には、語ではなく行為を説明します。
- ⭕️ OK例文:「今度の休みは、好きなアニメの舞台になった町に行ってみるんです」
終端D:英語話者にはローマ字併記が有効
英語では pilgrimage 単独だと宗教巡礼と誤読されます。
nippon.com英語版(2026年3月2日)は seichi junrei をローマ字のまま見出し語に使い、pop culture pilgrimage と説明しています。新宿・須賀神社の階段や鎌倉高校前の踏切を例示する記事です。英語メディアUnseen Japan(2026年2月25日、同年8月17日更新)も anime pilgrimage を主題に扱っており、語が翻訳されずローマ字で流通する段階に入っています。
- ⭕️ OK例文:"I'm going on an anime pilgrimage — we call it *seichi junrei* in Japanese."
終端E:ファン同士ならそのままでOK
ファン相手のSNS・会話では、動詞化・短縮も含めて自由に使えます。
- 「週末、『ゆるキャン△』の聖地巡礼してきました」
- 「聖地巡礼、思ったより歩くので靴は履き慣れたやつ推奨です」
- 「ここ、第3話の聖地です。看板まで同じで感動しました」
終端A〜Eのどれに落ちても、必ず対応する例文が1本あります。チャートを通せば、語の選択と文の形が同時に決まります。
「聖地巡礼」の例文|場面別にそのまま使える言い回し
場面別の例文をそのまま流用すれば、TPOの判断を省けます。以下はチャートの終端に対応した実用例です。動詞形・短縮形の使い方もここで整理します。
SNS・友人との会話(そのまま使える)
- 「明日から念願の聖地巡礼に行ってきます」
- 「『スラムダンク』の聖地、鎌倉高校前の踏切に行ってきました」
- 「聖地巡礼のついでに地元のパン屋さんに寄ったら大当たりでした」
社内の企画書・チャット(作品名を添えて使う)
- 「若年層向け施策として、アニメ聖地巡礼層をターゲットに検討します」
- 「対象は、作品の舞台を訪れるいわゆる聖地巡礼を目的とした来訪者です」
初出で「作品の舞台を訪れるいわゆる」と補足を付けると、非ファンの上長にも通じます。
社外・行政向け文書(言い換える)
- 「コンテンツツーリズムによる来訪者数の推移を分析した」
- 「映画のロケ地訪問を目的とした観光需要が拡大している」
動詞化・短縮の使い方
「聖地巡礼」は名詞のまま以外にも活用できます。
| 形 | 例文 | 使える場面 |
|---|---|---|
| 〜する | 「今週末に聖地巡礼します」 | SNS・会話 |
| 〜してきた | 「昨日、聖地巡礼してきました」 | SNS・会話 |
| 〜の聖地(短縮) | 「ここが第1話の聖地です」 | ファン同士のみ |
| 〜巡礼(作品名+) | 「ラブライブ巡礼で沼津へ」 | SNS・ファン向け記事 |
対象はアニメだけではない
現在は、対象ジャンルが大きく広がっています。
K-POPアーティストのMV撮影地、ドラマや映画のロケ地、ゲームのモデルとなった土地、漫画に登場した飲食店、スポーツ選手ゆかりの球場——これらすべてに「聖地」「聖地巡礼」が使われます。アニメ限定の語だと考える必要はありません。ただし対象が広がっても、宗教施設に使わない原則は変わりません。
「〇〇の聖地」という短縮形は便利ですが、実在の宗教施設が舞台の場合は要注意です。「この神社は〇〇の聖地」と書くと、その神社を娯楽対象として扱う響きになります。「〇〇の舞台になった神社」と書けば安全です。
使う前の7項目チェックリスト|言葉編4つ・行動編3つ
言葉の使い方と現地での振る舞いは地続きです。投稿前・訪問前にこの7項目を確認すれば、語の誤用と現地トラブルの両方を防げます。
言葉編(4項目)
- 主語は自分か第三者か:他人の行動を「あの人たちの巡礼」と呼ぶと、揶揄に読まれることがあります。基本は自分の行動を指すのに使いましょう。
- 「〇〇の聖地」と短縮して実在施設を指していないか:神社・寺院・教会を「〇〇の聖地」と呼ぶ形は、宗教施設を娯楽扱いする響きが出ます。
- 作品名を添えたか:作品名がないと宗教巡礼と読まれます。初出では必ず添えてください。
- 相手が非ファン/英語話者なら言い換え・併記をしたか:非ファンには「ロケ地を見に行く」、英語話者には anime pilgrimage (seichi junrei)。
行動編(3項目)
- 訪問先が私有地でないか:作品の背景に描かれていても、他人の住居や敷地であることは珍しくありません。
- 撮影可否と位置情報公開の可否を確認したか:撮影禁止の施設、位置情報の公開で住民に迷惑が及ぶ場所があります。
- 作品公式がマナー声明を出していないか:訪問前に公式サイト・公式SNSを確認します。
項目7が重要になった背景
作品公式が訪問マナーを能動的に発信する時代に入っています。
2026年2月24日のKAI-YOUの報道によると、Netflix発のオリジナルアニメ映画『超かぐや姫!』の公式が「関連場所への訪問についてのお願い」を公開し、私有地への無断立ち入りや無許可での撮影を禁止しました。声明では「これらの場所は地域の方々の大切な生活の場になります」として節度ある行動を求めています。公式が聖地巡礼を制御する動きが可視化された事例です。
「聖地」と呼ばれていても、多くは誰かの生活圏です。私有地への立ち入り、無許可撮影、深夜の騒音、路上駐車は、その後の作品と地域の関係を壊します。言葉の使い方を気にする人ほど、現地の振る舞いにも同じ注意を向けてください。
やってはいけないNG対応|5つの落とし穴
語の誤用で最も多いのは、宗教施設・慰霊施設への転用と、公的文書での無配慮な使用です。ここでは避けるべき5パターンを、NG例とOK例で示します。
NG1:実在の宗教施設を「聖地」と呼ぶ
- ❌「この神社が主人公の家の聖地です」
- ⭕️「この神社が主人公の家のモデルになった場所です」
信仰の場を作品の付属物として扱う響きが出ます。参拝者への配慮を欠く表現です。
NG2:慰霊施設・被災地に使う
- ❌「戦争アニメの聖地巡礼で慰霊碑を回りました」
- ⭕️「作品の舞台となった地を訪れ、慰霊碑に手を合わせました」
NG3:他人の住居を指して使う
- ❌「ヒロインの家の聖地はこの民家です」
- ⭕️(そもそも個人宅は特定・公開しない)
個人宅の特定と公開は、語の問題以前にプライバシー侵害です。前掲の『超かぐや姫!』公式声明も、私有地への無断立ち入りを明確に禁じています。
NG4:公的文書で無説明のまま使う
- ❌「聖地巡礼客の増加により観光消費額が伸びた」
- ⭕️「アニメ作品の舞台を訪れる来訪者(コンテンツツーリズム)の増加により観光消費額が伸びた」
精選版 日本国語大辞典が宗教義しか立てていない以上、公的文書では語義の説明か言い換えが要ります。
NG5:英語で pilgrimage とだけ訳す
- ❌ "I went on a pilgrimage last weekend."(宗教巡礼と読まれます)
- ⭕️ "I went on an anime pilgrimage (*seichi junrei*) last weekend."
NGの共通点は「実在の信仰・生活・公共の場を、娯楽の語で上書きしてしまう」こと。迷ったら、対象そのものを説明する言い方(「〜の舞台になった場所」)に落とせば、ほぼ外しません。
公的情報・専門機関はどう扱っているか
専門機関は「聖地巡礼」を観光現象として正面から扱い、規模も数値で示しています。語のフォーマル度を判断する材料として、一次情報を確認しておきましょう。
アニメツーリズム協会の認定制度
業界団体が「アニメ聖地」を公式に認定する制度が運用されています。
一般社団法人アニメツーリズム協会の公式サイト(2026年2月13日掲載)によると、「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」2026年版の掲載は計175件で、内訳はアニメ作品の舞台となった場所145件、アニメ関連施設30件です。
週刊アスキー/ASCII.jp(2026年2月13日発表を報道)によれば、2026年版は10周年を記念して認定作品数を従来の88作品から100作品に拡大し、新規に18作品・35自治体・1施設(兵庫県尼崎市の尼子惣兵衛漫画ギャラリー)が加わりました。
投票規模から見る国際化
選定投票の内訳からは、関心が国内にとどまらないことが読み取れます。
同じく週刊アスキー/ASCII.jpの報道によると、2026年版の投票は2025年6月1日〜10月31日に実施され、世界110の国・地域から約8万5000票が集まりました。内訳は国内約67%・海外約33%で、海外はアメリカ、インド、カナダ、イギリス、台湾からの投票が多かったとされています。
訪日動機としての位置づけ
訪日外国人にとっても、聖地巡礼は無視できない訪問動機です。
英語メディアUnseen Japanは観光庁の2024年調査を引用し、訪日外国人の11.8%がアニメまたは映画のロケ地を訪日理由に挙げたと報じています。ただしこれは英語メディアによる二次引用であり、観光庁の原典を直接確認できていません。数値を業務で使う場合は、観光庁の該当調査に当たって裏を取ってください。
業界団体・観光シンクタンク・辞書出版社がそれぞれ「聖地巡礼」を扱っている一方、表記は「アニメ聖地」「コンテンツツーリズム」と使い分けられています。公的な場ほど、宗教義と衝突しない語が選ばれる傾向があります。
予防・再発防止のコツ|誤用しない書き方の習慣
誤用を防ぐ最短の習慣は、「初出で作品名を添える」と「投稿前に対象を1秒確認する」の2つです。これだけで、この記事で挙げたNGのほとんどを回避できます。
習慣1:初出は必ず作品名とセットにする
文章でもSNSでも、最初の一回だけ作品名を付けます。
「『ぼっち・ざ・ろっく!』の聖地巡礼で下北沢へ」と書けば、2回目以降は「聖地巡礼」単独で問題ありません。文脈が確立するためです。
習慣2:投稿前に対象を1秒だけ確認する
指している場所が「信仰の場・慰霊の場・誰かの家」でないかだけ確認します。
該当したら「訪れた」「見学した」「手を合わせた」に置き換える。判断はこの一点で足ります。
習慣3:媒体が変わったら語も見直す
同じ内容でも、載せる場所が変われば語も変えます。
SNSに書いた文章を社内資料に転記するとき、社内資料を社外提出用に清書するとき——媒体が一段フォーマルになるたびに、この記事の早見表③の行を見返してください。
初出で作品名を添える。投稿前に対象を確認する。媒体が変わったら語を見直す。この3つを習慣にすれば、チャートを毎回開かなくても判断できるようになります。
よくある質問
「聖地巡礼」の本来の意味は何ですか?
本来は宗教上の聖地・霊場などを参拝して回ることです。コトバンク収録の精選版 日本国語大辞典は「聖地、霊場、あるいは本山などを、順次参拝して信仰を深める宗教行事」と定義し、アニメ用法の語義は立てていません。メッカ巡礼、エルサレム巡礼、四国八十八ヶ所、サンティアゴ巡礼路などが代表例です。アニメ用法は、小学館デジタル大辞泉が第2語義に「俗に」と注記して掲載しています。
「聖地巡礼」と「舞台探訪」はどちらを使うべきですか?
相手で選び分けます。一般ファンや推し活層が相手なら「聖地巡礼」、考証重視の古参ファンが相手なら「舞台探訪」が無難です。指す行為はほぼ同じですが、「舞台探訪」は「聖地」という宗教由来の比喩を避けた中立的な語で、背景と実景の照合といった考証寄りのニュアンスを帯びます。どちらか迷う相手には「作品の舞台を訪ねる」と行為で説明すれば外しません。
ビジネス文書や自治体の資料に「聖地巡礼」と書いてもいいですか?
社内資料なら可、社外・公的文書なら言い換えを推奨します。JTB総合研究所の観光用語集(2024年8月20日更新)は「聖地巡礼」をフィルムツーリズム/コンテンツツーリズムの一種と分類しており、公的文書ではこの上位概念を使うのが安全です。主要国語辞典でも語義の扱いが割れている(デジタル大辞泉=2語義/精選版 日本国語大辞典=1語義)ため、読み手によっては宗教行為と受け取られます。
英語で「聖地巡礼」は何と言いますか?
anime pilgrimage、または seichi junrei をローマ字のまま使います。pilgrimage 単独だと宗教巡礼と誤読されるため、anime を付けるか日本語表記を併記してください。nippon.com英語版(2026年3月2日)は seichi junrei を見出し語に使い pop culture pilgrimage と説明しており、Unseen Japan(2026年2月25日、同年8月17日更新)も anime pilgrimage を主題に扱っています。語が翻訳されずローマ字で流通し始めている段階です。
「聖地巡礼」はアニメ以外にも使えますか?
使えます。K-POPアーティストのMV撮影地、ドラマ・映画のロケ地、ゲームの舞台のモデル地、漫画に登場した飲食店、スポーツゆかりの球場など、対象は幅広く広がっています。ただし対象が広がっても、実在の宗教施設・慰霊施設・被災地・他人の住居には使わない、という原則は変わりません。
「聖地巡礼」はいつから流行語になったのですか?
2016年です。自由国民社の新語・流行語大賞公式サイトによると、第33回「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン新語・流行語大賞でトップテンに選出されました(受賞者はディップ株式会社、同年の年間大賞は「神ってる」)。アニメ文脈での使用自体はさらに古く、2002年1月〜3月放送の『おねがい☆ティーチャー』(舞台:長野県大町市・木崎湖)が初期の代表例としてよく挙げられます。定着まで十数年かかった語です。




